なぜ「コンテンツ・情報デザイナー」を名乗るのか

なぜ「コンテンツ・情報デザイナー」を名乗るのか

僕はちょっと前からSNS等で肩書きを「コンテンツ・情報・Webデザイナー / Webディレクター」にしています。Webデザイナー、Webディレクターは一般によく見る肩書きですが、コンテンツ・情報デザイナーはあまり耳慣れないかもしれません。

なぜ僕がそんな「コンテンツ・情報デザイナー」を名乗るのか、それはいくつかの理由があります。

  • Webディレクターという肩書きが示す職能のあいまいさ
  • 自分の職能はインフォメーションアーキテクト(情報設計)の枠にとどまらなさそうである
  • そしてデザイナーである、という自認

Webディレクターの仕事内容はハッキリしていないところがある

僕はフリーランスになる前のWeb制作会社時代から「Webディレクター」という体でプロジェクトに多く参画してきたので、仕事上での肩書きでは「Webディレクター」を長らく使っていたのですが、この「Webディレクター」の役割は中々に曖昧です。

字義通りに受け取るなら、Webサイト構築等のプロジェクトをディレクション(方向付ける)人、となるでしょう。では実際のところどうなのか。

あるプロジェクトでは顧客折衝・予算管理・リソース手配・進行管理から、制作物のクオリティチェックまで行う。また他のプロジェクトでは、進行管理とワイヤーフレーム作成、デザインとコーディングのクオリティチェック。ある場合は進行管理とコーディングのチェックだけ。

ともかく、この通りWebディレクターが何をするかはプロジェクトやあるいは会社次第で異なってきます。そのため「Webディレクター」という肩書きだけでは何が自分の主な職能がなんであるか、示しにくいのです。

情報設計が得意分野ではあるが、コンテンツ部分まで作れるのが強み

僕はWebディレクターとして求められる様々な仕事はほとんど経験・対応できてきたと思っています。企画・提案、プロジェクトマネジメント、サイトの設計、ワイヤーフレーム作成、デザイン〜実装の制作ディレクションまで。

その中でも僕が評価されて任されてきたのが情報設計の仕事でした。自分としても得意だという感覚はあり、興味を持っている分野だったので、インフォーメーションアーキテクト(IA)と名乗ることもありました。

あるデザイン会社が請け負った大手企業のコーポレートサイトリニューアルプロジェクトに情報設計として何度か参画していたりもしますので、自他ともに認める職能だと思います。

そして、色々なプロジェクトで情報設計を担当していく中で自分の強みだと考えるようになったのが、コンテンツの設計・制作能力でした。

情報設計・コンテンツ設計では文献調査が重要である

おそらく僕の情報設計・コンテンツ設計のプロセスの中で特徴的なのは文献調査を重視しているところだと思います。

もちろんクライアントやユーザーへのヒアリングは大事なのですが、その前に文献調査をしてある程度の仮説を持っておくことが大事だと考えています。

では文献調査とは何をやるのか?

  • クライアントとその関連企業、競合企業のWebサイトやSNSを網羅的に見る
  • 業界やクライアントに関する書籍や雑誌記事を収集して読む
  • 業界に関するレポートや論文を読む

こういったことを行い、クライアントが置かれている状況のほか、発信できそうな情報やコンテンツを探っていき、どのように設計するのがよいのか仮説を立てるのです。

そこからヒアリングを行って仮説のブラッシュアップを進め、様々なワークや制作を重ねて仮説を検証していきながら設計していきます。

この文献調査に重きを置くスタイルだと、当然クライアントが発信してきたコンテンツや競合他社のコンテンツにも多く触れますので、各ページのコンテンツ設計でも指針を作りやすくなります。

例えば、サステナビリティ活動の情報なら企業のSNSで発信していたあの内容をページに盛り込めないだろうかといったことを提案できたります。

そしてクライアントと関連企業のWebサイトを網羅的に見ることで細かく把握しており、どういったトーンでどういった言葉を使っているのかまで掴んでいますので、必要であれば文章の編集・執筆までも対応ができます。

このように全体の情報設計だけでなく各ページの細やかなコンテンツ設計・編集ライティングまでできるのがが僕の強みです。

演劇の脚本執筆やマンガ執筆で培ったコンテンツ制作能力

僕がコンテンツの制作、ライティングまでできるのはなぜか、振り返ってみればその根源は演劇にあるのでしょう。

僕は10代後半から20代前半にかけて演劇に携わっており、演出や演じる方もやってはいましたが、脚本を書いていました。いくつかの書籍を読んで脚本術を勉強して実践していましたし、文章術の本なんかも読んだりしていました。そして、コンテンツ設計と同じように資料を集めて読み込み、必要であれば人に話を聞きに行って、それらを材料に脚本を書いていました。

また、数年前からはマンガを描き始めました。絵やイラストを描いたりすらしていなかったのですが、先述のとおり演劇の脚本は書いていたので物語を作るという部分ではあまり抵抗がなく、自分が描ける絵を模索しながらマンガを描くようになりました。マンガも脚本と同じように資料を集めて取材をしながら描いています。

なぜデザイン史の漫画を描くのか
2年くらい前から近代デザイン史で著名な人物を題材としたマンガを描いています。コミティアや最近ではデザイン読書日和というイベントで頒布するほか、BOOTHで自家通販をやっています。 イベントではいろいろ質問をいただいたりすることもあるのですが、よくあるのが「なんでこういうものを描いているんですか?」というものです。

演劇の脚本を書いていた経験はコンテンツを作る能力の土台となっていて、マンガ制作はさらにその幅を広げてくれたように思います。

余談ですが、Webサイトに掲載するイラストを描く仕事もするようになったので、マンガ制作はほんとうに始めてよかったです。

情報設計もコンテンツ設計もデザインである

さて、情報設計とコンテンツ設計が強みではあるものの、肩書きとしてはどうしたものか。

翻ってデザインとは何かを考えてみると、本来デザインという言葉には設計までをも含む広い意味があります。プロダクトデザインでは機能やコンセプトを検討して、最終的にそれをどういった形・質感にするのか素材や生産まで視野に入れて、この全体がデザインの営為です。

これをWebなどのデジタルの制作物に重ねてみると、ユーザーが触れるコンテンツの内容やトーンを考えるのはプロダクトの質感を考えることと似ているようにも思います。もちろん、ビジュアルのLook&Feelがデジタルの質感に大きく作用することは当然ですが、そのビジュアルも情報設計の構造に依存します。

情報設計もコンテンツ設計もデザインの営為と言えるのであり、自分はデザイナーであると自認してよいのではないかと考えて、「コンテンツ・情報デザイナー」を名乗ることにしたのです。

※一応付け加えておくと、僕はWebサイトのビジュアル部分のデザインやフライヤーのデザインといったグラフィックデザインも仕事としてやっています。ただ、主の肩書きとしてはWebディレクターやインフォメーションアーキテクトとしてきていたのです。

コンテンツデザイン・情報デザインはデジタル分野で今後より重要になる……はず?

最近、デジタル分野ではメタバースがバズワードの1つとなっており、VR/ARのコンテンツが今後増えていくと考えられています。

僕自身、Ingressを体験してきたことからARには可能性があると感じていますが、ARグラスなどのハードが普及してからが本番だと思っているので、まだ少し時間がかかると考えています。

VR/ARのデバイスが普及したとしても、スマートフォンはすぐにはなくならないでしょう。同様にパソコンもすぐにはなくならないでしょう。さらにVR/ARのデバイスもいろんなものが出てくるでしょうし、また違う概念が出てくるかもしれません。

いろんな形でコンテンツが展開されていくのでしょう。そして、各々が好んだ形でコンテンツを受け取るのです。

そうなったとき、コンテンツデザイン・情報デザインの能力はより重要になってくると考えています。様々な形での展開に耐えうるようコンテンツを設計する必要があるからです。

APIを制するものはコンテンツを制する?

様々な形での展開について、今、実際にあるわかりやすい例でレスポンシブデザインがあります。スマートフォン、タブレット、パソコンなど、どのような解像度の端末でも対応できるようにデザインをしています。

レスポンシブデザインで問題となるのはほとんどが横幅・縦幅のことなのでビジュアル面の配慮が主ですが、同様に同じコンテンツをスマートフォンアプリやVR/ARデバイスで展開するとなると、見た目だけではなくコンテンツ自体の設計を考えなければならないでしょう。

WebにおいてヘッドレスCMSを使用したJamstackによるコンテンツ管理は、それを予感させる技術の1つだと感じています。将来的にはAPIを使用してVR/ARも含んだ様々な形でのコンテンツ配信が盛んに行われるようになっていくのではないでしょうか。

そうなったとき、コンテンツ・情報デザイナーはAPIの設計にまで関わる必要が出てくるかもしれません。僕としてはそこまで対応できるようになっていきたいと思っています。

森 慶太

森 慶太

Web・コンテンツ・情報デザイナー / Webディレクター
群馬県